封じられたモノ

5/8
前へ
/8ページ
次へ
床に転がった生首に必死の思いで段ボールを被せると、すぐに布団にもぐりこんで震えた。 あれはどうみても山口君の頭部だった。しかしそんなはずはない。何故何年も前に死んだはずの彼の頭が、当時と変わらぬ状態で存在する? 精巧な偽物なのか? そんなもの、誰が何のために? そもそも山口君は何故行方不明だとされたんだ? 行方不明ともなれば、裏山なんて警察が探しつくすはずなのに。まさか、死体が、消えていた? 誰かが、死体をどこかに運び、保存していた? そしてそいつが俺に送りつけてきたのか? 罪の告発のために? 誰が? ここの住所を知ってるやつはどれくらいいる? ……ちょっと待て。あの段ボールには何も貼られていなかった。ここの住所を書いた紙さえも。ここに、直接持ってきたのか? それとも、山口君が……? 再び疑問が頭を埋め尽くす。脳が思考を強制的に終了しようとしたのか、いつしか眠りに落ちていた。 翌日の寝覚めは最悪だった。夢だと自分に言い聞かせながら布団から頭を出したのだが、やはり視界には逆さに伏せられた段ボールが飛び込んできた。 その日は大学に行く気にもならず、そのまま布団の中で一日を過ごした。空腹を感じる余裕などはなく、ただまたあの時間に箱が届くのでは、という恐怖だけが心を満たしていた。 そしてその恐怖は現実のものとなった。届いた小さな箱は前日の物よりも細長い。 開けるのは躊躇われたが、どうせ開けなくても何も変わらないような気がして、その中身を見た。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加