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そして、翌日の夜。もはや当然であるかのようにまた箱が届いた。中身は、右手。
もう時間がない。焦りで意味もなく辺りを見回していると、ある異変に気がついた。
段ボールで隠したはずの頭部。それがいつの間にか段ボールの上にあり、じっとこちらを見つめていたのだ。
その虚ろな瞳に吸い寄せられているかのように、目をそらすことが出来ない。呼吸だけが苦しくなっていく。
やがて何かを吸い取られてしまったかのような感覚の後、今度はその瞳から何かがなだれ込んできた。悲しみ、恐怖、絶望。あらゆる負の感情が、救いを求めるかのように心に纏わり付いてきた。
それらに支配された心は、猛烈にあるものを求めた。それは、死。たまらなく死にたくなったのだ。
気が付くとキッチンに立ち、包丁を手にしていた。震える手で躊躇いなくそれを自分の首へと突き立てた。
……はずだった。勢い良く首を目指したはずの刃は、首の皮に少し傷をつけた程度で止まっていた。
何故?
そうつぶやこうとして、ようやく体が動かないことに気が付いた。突然の金縛りに焦燥するや否や、リビングのドアがゆっくりと開く音がした。
すると、動かなかったはずの体が今度は勝手に動き、顔がドアの方を向いていた。
その向こうに立っていたのは虚ろな目をした少年。その顔は先程自分を死へと引きずり込んだ彼のものだった。
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