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事務所の中に入ると、今日も鼻を刺激するのはコーヒーの匂い…………と共に香水の臭いも混ざっている。 探偵事務所内のソファーを見ればどうやら先客がいるようだ。 厚い化粧に、かなり離れていても臭う香水。年は50前といったところだろうか。 事務所内には気まずい空気が流れる。そんな空気を破ったのは友亮だった。 「ああ、咲希さん。こんにちは。申し訳ないのですがもう少し待っていただけますか?」 「はい、分かりました」 咲希は大人しく、友亮が座っているソファーの後ろに移動する。 すると、友亮の肩にのっていたあの黒猫が咲希に向かって飛びのって来た。 「こらこらノワール、悪さをしてはいけませんよ?」 咲希の肩にのり頬ずりをするその猫の毛づやは、かなり整っている。 「この猫、ノワールっていう名前なんですか?」 「ええ、そうですよ。ご迷惑なら下ろしてくださいね?」 「いえ、大丈夫ですよ。私、猫好きなんで」 猫好きの咲希はノワールを肩から外し、自分の手で抱え頭を撫でる。
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