50人が本棚に入れています
本棚に追加
「そろそろ、よろしい?」
空気になっていた対面に座るおばさんが話を戻す。
「ああ、すいませんでした。では、改めて。ご依頼は何でしょうか?」
おばさんは鞄から写真を取り出し、机の上を滑らせる。
「この子を探して欲しいの」
写真に写っていたのは一匹の猫。ノワールとは正反対の真っ白な猫だった。そして首輪は付けられていない。
「猫探しですか……、いつから居なくなったのですか?」
「一昨日の夜からよ。普段は餌を食べに家に帰ってくるのだけど、その日は帰って来なかったわ」
話を聞く限り、どうやらその猫は昼はいないが、夜は毎日家に帰ってきていたらしい。
「でも、それって……」
単に飽きて愛想をつかせたのではないか、と考えるのが普通である。
「いえ! そんなことは御座いませんわ! あの子はきっと何かに巻き込まれたんです!」
すごい形相である。般若の仮面も真っ青だろう。
咲希は友亮の返事を待つ。実はまだ、依頼を完璧にこなす、ということを完全には信じていなかったので、断るのではないかと心の中では少し期待していた。
「分かりました。ご依頼一件、確かに承りました」
しかし、残念ながら友亮の返事は了承。咲希は心の中でうなだれるがもちろん顔には出さない。
最初のコメントを投稿しよう!