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「はっ! 俺の能力知ってるだろ? まぁ、こっちの組織には報告しないでやるよ」
そういって俊は友亮に背を向け、歩き出す。
「……今日は見逃します。あなたに構っている暇は無いので」
「おっ、ありがたいねぇ。じゃあな」
言い終わると同時に俊の姿が一瞬にしてそこから消えた。
「……まったく、今日は厄日ですね」
美しい桜吹雪が、咲希の周囲を吹いている。学校の近くの桜も、もちろん美しいがこの桜並木には到底勝てない。
かなり長い階段を始めは勢いよく登っていたが、運動部に所属していない咲希にこの階段は重労働だったのだろう、今は悪態をつきながらようやく終盤である。
「はぁ、はぁ……」
ようやく階段を登りきった時には、もちろんというべきか、息切れを起こしていた。
この神社はなぜか、神社のくせに門がある。
今、咲希の前にはその大きな門があり、その右下にある小さな門は開いていた。
そこをくぐって、中に入り、周りを見渡す。石で作られた道の先には鳥居、そして神殿が。そして神殿の横には社務所がある。
目的の人物を社務所の中に見つけ、咲希は彼の下に歩き出した。隈見 一樹(くまみ いつき)。この神社の禰宜(ねぎ)である。
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