振り向いた先に

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4ヶ月前。 生まれて初めて、 一人で夜の繁華街を訪れた。 駅から近いはずなのに、9時を過ぎた繁華街はとても治安がいいとは言えない。 私は私服のまま顔を伏せて、駅前の薄汚れたベンチに座っていた。 入れ替わり立ち替わりベンチには煙草を吸いに来る人がいて、 私の回りはまだ煙の出る煙草の吸い殻に囲まれていった。 煙草を吸う度胸もなければ、 先ほどから掛けられる軟派の声に答える自棄もない。 つまり私は良い子をやめられない弱虫なのだ。 ──… 「出てきなさい」 些細なことだった。 模試の結果が悪かった私に説教する煩わしい母親から、ただ逃げたかっただけ。  
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