6094人が本棚に入れています
本棚に追加
「和夜さんと、離れるの、すごく、いやだった…!」
めいっぱいためて吐き出された言葉。
そして、あまりに自分に都合の良い解釈をしてしまう俺。
勿論、俺だってこんな期待したくない。
打ち砕かれたとき辛い、から…
頭ではそう思ってるのに…
楓がゆっくりと顔をあげて、こちらを見る。
あ―――…
なんだろう。
なんか――…
なんか、すごく…
「か、和夜さんと、一緒にいて…
私、楽しかったよ?」
恥ずかしそうに頬を染めながらも、まっすぐな視線から、伝えようとする意志を感じる。
「やっと家に帰れたのに、嬉しいのに…、私、なんか全然ダメになったみたいでっ」
…やばい。
これ…
この、流れ…
期待するな、と脳は信号を送るのに、心臓は完全無視。
ドクドクなんて可愛いもんじゃない。
楓が口を開くたびに、痛いくらい心臓が跳ねて。
ドキッ
そして、今も。
「私…、おかしくなっちゃったんだ…。
こんなの初めてで、どうしていいかわかんないよ」
俺を見上げながら、困ったように、少し責めるように呟く。
その顔は、ほんのりピンク色に染まっていて、ますます心臓をおかしくさせる。
脳ミソだって、もう次の楓の言葉を期待してる。
続く言葉が、俺の望むものであることを、期待してる。
最初のコメントを投稿しよう!