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時刻は夜。
俺は今、数百人の仲間(もとい同じ雇われの身の奴ら)と一緒に山中、ある場所へと向かっていた。
理由はもちろん葬儀屋の店主の依頼である。
でなければこんなところ、理由が無い限り来やしない。
◆
「盗賊にわしの大事な商売道具を盗られてしまった」
依頼内容はこうだ。
ある日、数人の盗賊に襲われながらもなんとか、命かながら逃げ出してきた。
しかし、そのとき大事な商売道具を盗られたそうだ。
なんでもそれは鏡らしい。
そして、その盗賊達が近くの山の中を住家にしているとの情報が入り、退治してくれる者を募集していた。
そこで俺達が集められたってわけだ。
数はざっと百人余り。
中には女もいたが、ほとんどが屈強そうな男達だった。
(あんな金額見せられたらなぁ……)
何でこんなに集まったかというと、一番の理由が今回の報酬。
その破格とも言える金額に、集まった者は俄然やる気を出した。
しかし最後、店主が――。
「言っておくが、今まで無事に帰ってきた者は一人もおらん、じゃから――」
そう言い、皆を一瞥し。
「幸運を祈る」
思わず俺も、ゾッとするような笑みを浮かべるのだった。
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