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それで、今に至るわけだが。
(おかしい……)
山中に入ってからだいぶ経つが、これといって襲撃も無く、気配がまるで無い。
ましてや今は夜。奇襲の一つや二つあってもおかしくないんだが……。
だが、俺以外の者はそんなこと気づく様子も無く、ズンズンと進んでいく。
この先はもうすぐ山頂。
身を隠す草木も次第に少なくなってくる。
(いやな予感がする……)
なにかこの先に、俺達に得体のしれないものが待ち受けているような。
そこへ行ったらもう二度と引き返せないような。
俺の直感が、そう告げているような気がした。
(こりゃ、皆に一応知らせたほうがいいのか? いや、きっとそうだ)
「おい――」
そう決めて、口を開いたその時だった。
「ギャーーーッ!!」
「「「っ!?」」」
前方で数名の悲鳴が聞こえた。
「て、敵襲だーーっ!!」
一人が叫ぶと、周りの奴らが一斉に戦闘態勢に入る。
俺も得物を構え、周りを警戒する。
(さーて、やっとお出ましか)
色々考えたいことはあるが、そんなのは後だ。
まずは目の前にある問題を片付けないといけない。
「最近ご無沙汰だったから腕が鳴るぜ!」
久々の戦闘に、俺は知らずのうちに興奮していたのだった。
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