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静まり返る部屋の中で、沈黙を破る宗政の声が、牧の耳に届いて来た。
「仮にその人物を私が知っていたとしたら……。君はどうするのかな。」
宗政は振り返らずに、独特の雰囲気を醸し出して、言葉だけを牧に投げ掛けていた。
牧は自分より身長が小さい宗政の背中が、とてつもなく大きい事に驚いていた。
あまりの宗政の存在感に、牧は生唾を一滴飲み干すと、喉を通る音は部屋に響き渡っていた。
牧は椅子から立ち上がると、深々と頭を下げて宗政に問い掛けた。
「お願いします。京介さんの事を知っていたら、どんな情報でもいいですから教えて下さい。お願いします。」
再び部屋中は沈黙が支配する……。
宗政は振り返ると、牧の方を見て一言投げ掛けた。
「二千万でどうだ。」
「……。えっ!」
宗政の言葉に牧が驚きながら頭を上げる。
「調べた所、牧君の今の残高は、確か約四千万だったはずだな。君の今持っている残高の半分を出せば、吹雪京介の事で私の知っている情報を教えようではないか……。」
牧はスカーズに来て約一ヶ月で二千万円を稼いでいた。
スカーズに来る時に二千万円持って来ていたので、現在の残高は約四千万円だったのだ。
宗政が要求したのは、残高の半分の二千万円だった。
つまり、スカーズで牧が稼いだ金を、全て情報料として差し出せと言う事だったのだ。
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