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沢村遥斗(さわむらはると)がスカーズから姿を消して三日が経過していた……。
国民同士のギャンブル勝負だけが、唯一お金を稼ぐ手段のスカーズでは、住民達の交流などほとんど無く、遥斗が消えた事など誰も気が付かないのだった。
スカーズは、いつもと変わらない時が流れていたのだった。
スカーズの国民は、胴元ギャンブラーと呼ばれ、胴元ギャンブラー達が生活の拠点としているのは、住宅エリアに数多く建ち並ぶ一軒家となる。
数多く建ち並ぶ家の中で、一件の家で大きな音が響いていた。
音が響いた家の表札には、牧定晴と書かれていたのだった。
「いってぇー。」
牧が床に踞り、小さな声を挙げて背中に走った痛みに耐えていた。
寝返りの際に、ベッドから床に落ちて背中を強打していたのだ。
「ってぇ……。朝一番からこれは効きますね……。」
仰向けの状態で、ベッドの横に置いてある棚に右手を伸ばしてタバコを手に取った牧は、タバコに火を付けて煙を天井に思いっきり吐き出していた。
時刻は朝八時を過ぎた頃……。
ピンポーン
床に寝転んでいる牧の耳に、来客を知らせる音が聞こえて来ていた。
「こんな時に誰っすかぁ。」
牧は背中に手を当てながら立ち上がると、タバコを灰皿に揉み消して、タバコをシャツのポケットに入れて扉の方へと歩を進めていた。
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