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雨が止み、青く透き通った空の向こうに七色の鮮やかな橋を見つけた。
暗雲を切り裂いて輝く虹の橋は、人々の雨でどんよりとなった気分を吹き飛ばしてくれる。
僕はそんな虹が大好きだった。
「わぁ、おっきな虹」
突然、横から鈴のような澄んだ声が、耳にすぅっと入ってきた。
「ねぇ、虹ってとっても綺麗なものだと思わない?」
その言葉は女の子が、隣で同じように虹を見上げていた僕に向かってかけたものだった。僕は最初はそのことに気付かなかった。
だから、ふと横を見たときに女の子と目が合い、ようやくそれが自分への問いかけだと気付いた。
「あ、うん。き、綺麗だね。です」
へんに緊張したせいか言葉を噛みまくっていた。
「あはは、そんなに慌てて言わなくってもいいのに」
しどろもどろになっていた僕を見た彼女は可笑しそうに笑っていた。
ふつう初対面の人間にいきなり話しかけられて、しかも笑われたら腹が立つものだろう。しかし、不思議と彼女にはそんな感情が湧いてこなかった。
たぶん彼女の出している雰囲気のせいだろうなと思った。
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