プロローグ

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「分かりました!すぐにそちらへ向かいます!」 「あ、それとこれもお願いね。」 はぁ何でこんな目に…… 溜め息混じりに呟く。 最近は特に目が回るほどの忙しさだ。 こんな事になるんならもう少し長生きすれば良かった。 と、後悔し全ての原因となったあの事を思い出す。 まさかあの日、記憶以外ほぼ全て失い、今のこの状況になるなんて想像もつかなかった幼い自分の事を。 全ては蝉の鳴き声がよく聞こえたあの日のこと。 「よっしゃ!!ドラク〇3クリア!」 うんうん。やっぱド〇クエは最高だよ!! マザ〇も良いけどな!! さて、と。 あれ? あれれれ? あれぇ!? 俺が以前から買いだめていた大量のチョコが………じゃない。 〇ラクエ4が姿を消した。 「姉貴!ドラ〇エ4知らねーか?」 「あぁ?4?こないだ売っちまったよ。」 マジで!? 「姉貴。」 「何だ?」 「〇ラクエ4狩ってくる。」 「おい、待てよ。漢字が違うし、親に留守番頼まれてんじゃね―か。 お前が。」 「そりゃあ姉貴に留守番頼む訳ねーよ。」 「どういう意味だ。」 「そのままの意味だ。」 「なるほど、なっ!!!」 場馴れした姉貴の強力な蹴りが飛んでくる。 が。 「自分でもそう思ってるんだろ?」 その蹴りは空振り。 運動が結構出来て良かった。少なくとも姉貴よりは良くて。 「今のは本気だったのに……」 「おいおい……実の兄弟にそれはねーよ。」 「兄弟になってるぞ。私は女だ。正確には姉弟だろ。」 「姉弟とかふざけてんな。正確には――てか、姉貴が女?姉貴を姉と認めても、女とは認めん。」 「な・ん・だ・と!!!」 連続で蹴り。 で、たまに、フェイント。 手で防いだり、避けたりして20分はたった頃。 「……ハッ、ハァ、お前化けもんかよ。」 「失敬な。」 「……しょうがないな。許してやるからド〇クエ買ってこい。帰ってきたら、一緒にモ〇ハンやろ―ぜ。」 「ああ、マ○パもやろうぜ。てかそれ軽く死亡フラグだし!」 「いってらー」 財布にドラ〇エを買うのに十分足りるように小遣いを入れ家を出た。 これが、姉貴との最後の言葉になるとも知らずに。 「いらっしゃいませ!!」 「すみません。ド〇クエ4ありますか?ファミコン版の。」 「ファミコン版ですか……ちょっと待っていて下さい。」 「……すみません。ありませんでした。DSならあるんですけど。」 「そう、ですか……」
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