第1夜 深夜のバス

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雨の降る夜、私はその日も、バスを待っていました。深夜ということもあり、バスを待っている客は、数人しかいませんでした。私の家は、駅からバスで30分ほどの山の上にありました。バスは、数分遅れて駅を発車しました。ほとんどの客は、駅から10分程度の住宅街で下りていきました。そして、客は私ともう一人の二人だけになりました。私は一番後ろの席に座って、外を見るでもなく、窓に映る車内をみるでもなく、うとうととしながら、景色を見ていました。ふと気づくと、車内には私ひとりでした。もう一人客がいたはずなのですが、うとうとしているうちに、どこかのバス停で下りてしまったのだろうと思いました。バスは、ほとんど家の無い山道を登っていました。そのとき、運転士が声をかけました。「あれ?お客さんひとりですか?てっきり、もうひとりいたとおもったんだけど、おかしいな。どこで下りたんだろう。」私は、周りを見回して、もうひとりの客をさがしましたが、ほかには誰もいませんでした。運転士は、何事もなかったように、また前を見て運転していました。
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