好色家アルバルーチェの前口上

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美しいものは儚いと、世は常々申しております。しかしそれは儚さ故の希少価値がそう言わすのでございましょう。 真の美しさとは、永久不滅。美しさを誇り続ける強さこそ真の美しさと言うべきものだと私は思うのです。 しかし、左様、永久こそこの世には存在し得ない代物。正に希少価値の究極。したがって永久こそが真の美しさ。 これが、長年真の美しさについて問い続けた私の出した答えであります。 さあもう焦らしてくれるなと、皆様の瞳が黒く光っておりますがもうしばしのご辛抱を。 結論から申し上げれば、私どもは永久に美しくあり続ける人形を造り上げることに成功いたしました。 今までも私どもは数々の生きた人形を産み出して参りましたが、それらはいずれも、後に老い、醜い姿に成り果て、しまいには死ぬ、私どもの目指す永久の美を持ち合わせない未完成品、いわゆる失敗作でございました。 しかし、今度は違う、決して老いることなく、永久に生き続け、美しさを誇る人形、それをついに私どもは完成させたのです。どうです皆様、興味深いでしょう。 さて、もう待ちきれないというご様子ですね、いいでしょう、そろそろ競売に入りましょう。 と、その前にもうひとつ、皆様にお話ししておかなければならないことがございました。 これが最後でございます、しっかと頭に叩き込んでから競売に臨んでいただきたい。
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