2958人が本棚に入れています
本棚に追加
翔は驚いた顔で振り返ると、胸に回った清香の手を握り辛そうに目を閉じる。
「ごめん…話しなら、今度ちゃんと聞く。だから、莉子…」
「嫌。翔、来てお願い。少しでいいの…お願い」
「翔…行かないで…」
「!」
携帯から聞こえたすがるような清香の声に、莉子はスカートを握り締める。
「翔。私待ってる。ここで、翔をずっと待ってるから…」
莉子は溢れそうになる涙に唇を噛み、振り絞るように言った。
「…莉子、ごめん。いくら待たれても、今日は俺そっち行けない。ごめんな。ホント、ごめん」
翔がそう言うと電話は切れた。莉子は携帯を耳に当てたまま俯き、暫くして立ち上がる。
最初のコメントを投稿しよう!