さよなら

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翔は驚いた顔で振り返ると、胸に回った清香の手を握り辛そうに目を閉じる。 「ごめん…話しなら、今度ちゃんと聞く。だから、莉子…」 「嫌。翔、来てお願い。少しでいいの…お願い」 「翔…行かないで…」 「!」 携帯から聞こえたすがるような清香の声に、莉子はスカートを握り締める。 「翔。私待ってる。ここで、翔をずっと待ってるから…」 莉子は溢れそうになる涙に唇を噛み、振り絞るように言った。 「…莉子、ごめん。いくら待たれても、今日は俺そっち行けない。ごめんな。ホント、ごめん」 翔がそう言うと電話は切れた。莉子は携帯を耳に当てたまま俯き、暫くして立ち上がる。
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