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嘘で言うのは簡単だ。けど、言えば女の執着はひどくなるだろうし、清香に言ってやれなかった言葉を、好きでもない女に言う事への躊躇いもあった。
別れずに、二度と好きか聞かれなかった事にホッとしながら、好きだと言われなくなった事が寂しくもあった。
そう感じた時には、既に好きだったんだろうけど…。
もしあの頃、嘘でも『好きだ』と言えていたら、今も離れず側にいてくれてたんだろうか?
昼を過ぎ、暑さと日差しはますます強くなる。照りつける太陽を手で遮り、流れる汗を拭った。
1年前も、こんな風に暑かったか?そんな中来ないと言った俺を、莉子はどんな思いで待ってた?
あの日、出かける準備をしていた俺の部屋に、清香が飛び込んで来た。
気の強い清香は、人に涙を見せるのを嫌う。その清香が、涙を浮かべ家まで来た。
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