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和真にどうして大学近くの部屋を選ばなかったのか聞くと、駅近の方が何かと便利だからだと言われ、和真らしいと思った。
翔の親友でもある、和真。
付き合う事や、一緒に住む事に迷いがなかった訳じゃない。 初めのうちは、奈美が一緒でも会うのに抵抗があった。
電車の窓から見えた海に、莉子はあの夜の事を思い出す。
暗い海に沈んだ携帯。
涙で滲む船のライトから視線を外すと、こちらに歩み寄る和真の姿を見つけ目を疑った。
「…なん…で?」
そう聞くと、和真は悲し気な目で口を開いた。
「莉子ちゃん…ごめんね」
和真の言葉に何も言えず、その場で泣き崩れた。泣き続ける私の側に、和真は一晩中いてくれた。
莉子は遠い目で、朝日の照らす海を見つめた。
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