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その人の名前は、神山ヒカル。私と同じ、K大学病院で医師として働いている。
ヒカルは、ずば抜けた頭脳の持ち主だった。
そしてそれに付け加え、大変な美貌の持ち主だった。
私は、ヒカルと中学生の時からの親友で、ヒカルの体の事は、知っていた。
ヒカルは何でも私に悩みを話してくれた。
楽しい時は共に笑い、辛い時には、二人して泣いた。
そして私はヒカルに持ってはならぬ感情を持っていた。
狂おしい程の愛、と言う感情を。
普通、両性具有と産まれて来た赤ん坊は、直ぐに、どちらかの性になるための手術を受ける。しかしヒカルの場合、心臓が弱く産まれた為、手術が出来なかった。
手術に耐えられる体に成長するまで、ヒカルはその乳房を潰し、関係者以外、誰にも両性具有者だとばれぬように男性として生きてきた。
しかし、その手術を行う機会はなかなか訪れなかった。
手術を数日と控えた日にヒカルは、よく心臓の発作を起こした。まるで神がその手術を拒むようだった。
結局、27歳と言う現在の年齢まで、ヒカルは両性具有のままだった。
現在勤めるK大学病院の限られた何人かの関係者は、ヒカルの身体の事を知っていた。
ヒカルはこの病院で産まれ、幾度かの手術のチャンスを逃してきたのも、この病院だったのである。
しかしこの事はあくまでも、内密に行われきた。
ヒカルの人権を尊重する為に。
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