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「全く。つまらない魔物のふりをして、気配を隠すなんてくだらない事をしますね。面倒な」
俺がそう言うと右肩のカレンが目を細めて言った。
「こんな所に隠れてたなんてねえ?面倒くさがりにも程があるわよ」
そう言ったカレンに頭を抱えて呻く魔物の様子に、アリスは驚いた表情をする。俺は苦笑して言った。
「さ。人型になってくださいね。あ。勿論、魔力は抑えて。で、さっさと中に入りましょう。目撃されると面倒です」
そう言って、アリスを促して洞窟の中に入って行く。魔物はゆっくり起き上がって、俺達の後を追ってついて来ると同時に黒い靄に包まれて行く。
そして、それが消えた時。そこには細身の真っ黒な髪の男性が俺達の後に続いて洞窟に入って来た。
洞窟の入り口は普通の洞窟だったが、途中に大きく曲がる場所が有って、その先は一見すれば行き止まりに見えた。
だが、そこに俺が一瞬ノックをするように軽く手を触れると、ドアが現れてそのドアを開けて中に入ると、まるで普通の家の中に入ったかのようだった。
「え?ええ?」
驚いた声を上げたアリスにクスリっと笑ってカレンは言った。
「こいつは、私の部下の部隊の一人よ。全く。仕事をするのも、今の魔王に従うのも面倒だってこんな所に隠れてたなんてね。呆れたわ」
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