730人が本棚に入れています
本棚に追加
雄叫びを上げるキメラに緊張した表情をするフレッドだったが、俺の様子と、攻撃の動きを止めたキメラに、自分も下がり剣を下ろした。
いつでも攻撃は出来るように、剣は持ったままだけどね。さすが帝だね。
俺は、近寄って魔樹の部分に触れると力を使う。
俺の真っ白だった髪は、赤い光に包まれて居て、まるで真っ赤な髪をしているように見える。
三体のキメラの素材のうち、魔樹だけは分離が可能だ。だから、俺は他の二体との境目に力を滑り込ませて纏わせて行く。
他の二体も協力的で、自分達がどうにもならない事は理解している。だから、せめて魔樹だけでもと力を貸してくれた。
苦しいのだろう。大きな叫び声を上げるキメラに、俺は心を痛める。だが、今は魔樹を救う事にだけ集中するしかないのは、分かってる。
俺はそのまま力を込める。キメラには全身を痙攣させながら動きを止める。
ちょうどその時、召喚陣が再び光を纏い、そこから真っ黒なローブを纏った死神が漸く姿を現した。
俺は、魔樹をキメラから引き剥がしながら言った。
「少し待って欲しい。魂を狩るのは剥がした後でお願いしたい」
俺の言葉に鎌の動きを止めて死神は言った。
最初のコメントを投稿しよう!