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動物園を出た僕と加藤は駅前にいた。
募金箱を持った子供達が大声で怒鳴っている。
僕はそれを見て立ち止まる。いきなり立ち止まった僕を加藤は不思議そうに振り返ってみていた。
後ろポケットから使い古した財布を取り出すと、僕は子供の持った募金箱へと近づいていった。
財布の中から札を全て取り出し募金箱へ放り込む。そして小銭入れの部分を開け、それもひっくり返して入れた。
目の前の子供は笑顔で「ありがとうございました!」と言った。慌てた加藤に背中から肩を掴まれる。
「ばっ…バカ!!なにやってんだよ!!気でも狂ったか!?」
僕は手で加藤をあやすように制すると、駅へと二人で歩いた。
「いやね、思ったんだけどさ。俺って自他共に認める一般人なんだよね。だからさ、あのまま素通りするのが普通だと思う。でもそ―すると他の皆も素通りするってことだから募金は集まらないわけだよ。でも僕が財布の中身を募金箱へぶちまけるとさ、他の一般人にだってそ―ゆうことする人もいるかもしれない……て何かさ信じることが出来る気がするんだよね。確かにバカだとは思うよ、でもそーゆうバカが他にも現れるんじゃないかってね」
「……まぁ、お前の言うこともなんとなくだけど……わかるような気もするけどな」
僕は改札口の前で財布を取り出したまま固まる。
「……加藤……やっぱり金貸して……」
「…………前言撤回。やっぱりお前の言いたいことわからんわ……」
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