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午前10時。電話の後に彼氏と別れ、家を出たアタシは駅前の改札口に立っていた。
遠くでもわかる懐かしい姿が見える。ウチの母だ。
少し小さめのキャリーバックを引きずりながら、こちらに気づいたのか手を振りながら近づいてくる。
母が慣れない手つきで切符を入れ、改札口を潜ってきた。アタシはすかさずキャリーバックを引き取り手伝ってやる。
「来るなら来るでもっと早く連絡してよね。アタシだって色々と忙しいんだから」
「ふ――ん…彼氏とデートでもする予定だった?」
――ギクッ…
「そ…そんなんいないから!も…ホント……全然!!」
「あら、アンタもいい歳なんだし。いたって全然構わないんだよ。……そんな慌てて否定しなくてもさ」
「そ……そーなんだけど、それよりもお母さん。アタシ……もっと重大な隠し事が……」
「えっ?……なに??」
「いや……それは家に帰ってから話すよ」
アタシ達はそれから気まずい雰囲気のまま、無言でアパートへと向かった。
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