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おもむろに片側のヘッドホンを耳からズラし、耳元で叫んだ。
「おはよっ!!」
「ぎゃあ!!」
ビックリした彼氏のメガネがひっくり返った拍子に取れかかっている。
メガネのずれた状態のままおずおずと私を見た。
「…びっくりしたぁ――…おどかす時は一言かけてからにしようよ」
「それじゃ意味無いだろう?」
(あたしが働いていた時は忙しさにかまけて放ってたけど、
無職ヒマ人の現在のあたしは、彼氏の沈んだ心を引き上げるくらいの甲斐性はあるってもんで。)
テレビではぬいぐるみを着た若者が若い女性を襲っている。
〔…つづきまして各地のレポートです。〕
〔本日、T市の○×動物園ではホッキョクグマが逃げ出した場合を想定した訓練がおこなわれ……〕
「あっはっは、全然訓練になってないし。みんなニコニコしながらやってんじゃんねぇ?」
「…そうだ。アンタ今日休みだし、天気もいいし、動物園とか行っちゃう?」
「動物園――――?」
「動物園かぁ――…いったい、もう何年行ってないんだろうなぁ」
「よし、じゃあ決まりでしょ―」
RRRRR
RRRRR
そこでテーブルの上で充電器に差しっぱなしの携帯が鳴り出した。
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