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ぱっと目が覚めた。ゆっくりと起き上がり、ふぁあと欠伸をする。必要最低限の物しか置いていない、いつも通り殺風景な僕の部屋がまだ覚めきってない目に写る。
……何か、夢を見た気がする。そのせいか自分の部屋であるはずなのに、なんだか違和感を感じる。
目をこすりながら、まだ重たい頭を起動させる。
うーん、何だったっけ。着物を着たおじさんがいた気がするんだけど。まぁいっか、たかが夢だし。ベッドから出て立ち上がり、カーテンを開けた。その瞬間に白い光が差し込む。……むぅ。眩しい。
思いっきり伸びをして、目パジャマを着替えようとクローゼットの中の学ランを引っ張り出す。
……って、あれ、何かサイズがでかいぞ?よくよく見てみると、なんだこれLサイズじゃないか。名前の欄には僕の字で「華原鶇」。……ふむ、どうやら兄さんのらしい。
そういえばこの間クリーニングに出したっけ。そのときにでも間違えたのだろう。もしかして僕のMサイズは鶇の元にあるのかな。……寝ぼけて着ていないといいけど。
仕方がない。取りに行かなければ。黒いショートの髪も一応とかして、軽く身支度を整えてから鶇の部屋へと向かう。
「鶇、入るよ」
声をかけて、ブラウスにパジャマのズボン姿で失礼する。僕の部屋を出てすぐの向かいの茶色いドアを開ける。僕の部屋と同じくいつも通り殺風景な部屋。
ベッドを覗き込むと、鶇はまだ眠っていた。筋肉質の腕やら足やらが毛布の端からのぞいている。白い髪に鋭い目という極悪人顔の兄貴も、寝顔だけはどこかおとなしい。そんなことを考えて、くすりと笑う。
「おーい、そろそろ起きないと遅刻するよ」
それだけ声をかけて、どうせ怒りはしないので勝手にクローゼットの中を漁る。
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