幕末ラビリンス

Ⅰ.始まりはいつも突然ってやつですか。

「じゃあね、鶇。二度寝なんかしちゃあいけないよ」

「おう」

あら、いい返事。みたとこ目は完全に覚めたようだし、今日は遅刻しないですむかもしれない。
さて、僕もさっさと着替えなければ。

取り替えてきた学ランを抱えて部屋に戻る。手早く学ランに着替え、そのままリビングに行く。

リビングでは、伯母さんがもう朝食の準備をしていた。

「あら、真ちゃんおはよう」

苦笑して、僕もおはようございますと返す。

一緒に暮らし始めて4・５ヶ月になるかな。ちゃん付けはやめてくれと言ったのに、伯母さんは女の子なんだからと言って聞いてくれない。

緩やかなウェーブの茶色い髪に、顔を通る細かい皺。優しげな笑み。
可愛らしい外見からは想像できないくらい、頑固だ。