Ⅵ.そんな気はしてた。

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「……土方さん、その話、また後にしてもらっても、いいですか……」 僕って人はなんでこう、体調が安定しないんだろうね。足取りがおかしくなった僕を、兄さんが先のように抱きかかえる。 「……おい?どうしたんだ」 「どうしたんですか?」 異変に気がついたらしい二人が僕の顔を覗きこんでいるのが見える。ただ、頭がぼうっとするのですぐに返答が出来ない。代わりに兄さんが短く風邪だろう、と言った。うん、僕もそうだろうと思うよ。水にぬれたせいかな、多分。 風邪、と反復する土方さんの表情に呆れが過る。……この程度の出来事で風邪か、もしくは風邪でこんな重症になるのか。おそらくそんなところだろう。 兄さんはその場に立ち止まってしまった二人を急かすように、言う。 「……話は後だ。屯所に戻るぞ」 「お、おう……分かった。華原弟、お前はそのまま寝てろ」 「はぁい……」 まともに会話したことないはずの兄さんが立て続けに自分にしゃべりかけたからだろうか、少し驚きつつも土方さんはそんな言葉をかけてくれる。力なく返事して、まぶたを閉じる。 ぬれた着物がひどく冷たい。寒さから体を小さく縮めると、額に何か温かな感触があった。思わず目を開けようとするも、重い体はその指示を拒む。 そのまま、僕は暗闇の中に意識を沈めてしまった。
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