酔いどれ狼の独り言

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「なんてことない。暇だからさ。それで、何時もの連れは今日は来ていないのか?」  パテアは、被っていた帽子を直して辺りを見渡す仕種をした。 「お嬢ちゃんなら、そろそろ来るだろう。今日は何を話してやろうか?」  旅人が、防波堤から海を見詰めた。 「先程、俺に話してくれた鯨の話しで良いんじゃないか?」 「それは、軍医さんに話す前に話してある。もっと別の話しにしよう」 「そいつは興味深い話しだ」  パテアは、旅人の傍らで目を輝かせた。 「聞いていくのか。余程、暇なのだな」 「そうさ。問診も終わっているし、軍医の研修も終わった。だから、旅人さんを訪ねて来たんだよ。毎日が退屈なんだ。何か楽しいことがあったら教えてほしい。少なくとも貴方の話しが唯一の楽しみであることは間違いないんだ」  パテアが、子供の様にせがむ。その様子に旅人は、笑うだけだった。 「軍医さん、何歳だったか」 「今年で百歳だ。何年生きてもこの虚無感は埋まらないよ」  旅人の白髪が潮風になびく。磯の薫が濃くなった時、少女が翼を持った紫色の獣毛を持つ生物を重そうに抱えて防波堤を歩いて来るのが見えた。 「ほら、お出でになった。おや?」  旅人が、少女と魔獣に気がついた。
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