夏の宴

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岩見俊樹は、見た目からして自衛官とうう男だ。 質実剛健、剛の男。隆々とした筋肉で浅黒い体からは想像もつかないほど気を使う男でもある。 そんな彼が最近目下気になることが一つ……。 「五十嵐二尉は下戸なのか?」 小隊の休憩所で呟くと誰もが顔を見合わせた。 「そ~いや、飲んだの見たことねぇ」 「あ、確かに」 「実は最強に酒乱とか」 「うわ、それ洒落にならねぇよ。あの人幹部のくせに銃剣道鬼強なんだぞ」 「いや、キス魔とか?」 「……小隊長なら我慢できるくね?」 「いや、やっぱり酒豪節が有力でしょ。酔わないから飲まない。不合理かつ無駄なことは一切しないみたいな?」 個々にいいたいことをいうが的を得た答えなど出ない。 「俺は下戸節を押す」 「じゃあ皆で賭けません?」 そう言葉を発したのは、上村士長であった。
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