夏の宴

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蛇に睨まれた蛙のように村上は一瞬固まり、はいと頷く。 異様な光景だった。 先ず背広、二つボタンのフォーマルなそれを村上が外す。五十嵐はいたってまじめな顔である。 次にネクタイ。紺色の落ち着いたそれをゆっくり解く。若干、村上は震えていた。 そしてワイシャツ。 真っ赤になっていく村上の顔。これは酒の席のノリとはいえ憤死に値する。 ボタンを外し終わると五十嵐は満足そうに村上の髪をかき揚げ囁く。 「やればできるじゃないか」 「……、羞恥プレイだ」 村上が何か呟いたが、五十嵐は素知らぬ顔。 「よし、ご褒美をやろうか」 フルフルと首をふる村上。だが、五十嵐は聞く耳持たずだ。 顎をくいっと引き上げ、そりゃもう自然に口づけた。 その瞬間目があった。 というより皆その瞬間を見ていたといってもいい。
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