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「ちょっと、すいません……」
「何です………っ!いっ、いたたた!!」
あっ…本物なんだ。
確かめるために思いっ切り引っ張ってみたけど、取れそうにないし、痛がるし、何より温かみがあるから本物みたい。
パッ…と手を離してあげるとうさ耳の男性は耳をさすっていた。
「いきなり何するんですか!?」
「いや、本物かなと思って……」
そう言うとうさ耳の男性は手を止めて、私をじっと見つめてきた。
「貴女は何も覚えていないのですか?」
「……はっ?」
突然のことで、何を言っているのか理解できない。
何も覚えていないって、どういうことなの……?
私の知らないことを目の前の男性が知っていると思ったら、何故だか分からないけど、目の前の男が急に怖く感じ始めた。
自分の意志とは関係無く、震え始める体。
「……その様子だと、何も覚えていないようですね」
そう言って、私に一歩近づいてくる。
感情の読めない、抑揚のない話し方。
仕草一つで、彼が纏っていた空気が変わった。
男性の変わりように恐怖を覚えた私は、怖さから顔を上げることもできない。
そして、相手の表情を確認することすらできずに、ただ震えるだけしかできなかった。
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