プロローグ

10/11
前へ
/361ページ
次へ
「呆れてるだけだ。怒っても一緒、だと」 フッと息をついたあと、紫姫はそう言った。 「良かった……今日という今日は殺されるかと思った……」 その言葉をあとに、安心したのか光騎は寝息を立て始めた。 紫姫は光騎の身体に優しく、タオルを掛けてあげる。 「コイツがなんでこんなにケンカしてるか、ホントはアタシ何でだか分かってんだ……」 「光騎は姉の背中を異様なまでに追いかけている。そして何かに怯えている……」 紫姫の呟きに答えるヒュドラ。 「それも、もうすぐ終わる――もうすぐな」 「もうすぐって……紫姫……」 事を知らないワイバーンが紫姫へと疑問を口にした。 「ああ――奴にやっとたどり着けそうなんだ」 荒らされた部屋に一筋の月の光が入る。紫姫の表情にはどこか大きな決意が感じられていた。 「優奈様、あの女は危険ですわ」 あるホテルの一角に優奈と椿はいた。 「優奈様の身になにかあったらわたくし生きていられませんわ……」 陰りのある表情で優奈に先ほどから訴え続ける椿。優奈は聞いているのか、聞いていないのか髪を指先でくるくるといじくり回していた。
/361ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加