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「呆れてるだけだ。怒っても一緒、だと」
フッと息をついたあと、紫姫はそう言った。
「良かった……今日という今日は殺されるかと思った……」
その言葉をあとに、安心したのか光騎は寝息を立て始めた。
紫姫は光騎の身体に優しく、タオルを掛けてあげる。
「コイツがなんでこんなにケンカしてるか、ホントはアタシ何でだか分かってんだ……」
「光騎は姉の背中を異様なまでに追いかけている。そして何かに怯えている……」
紫姫の呟きに答えるヒュドラ。
「それも、もうすぐ終わる――もうすぐな」
「もうすぐって……紫姫……」
事を知らないワイバーンが紫姫へと疑問を口にした。
「ああ――奴にやっとたどり着けそうなんだ」
荒らされた部屋に一筋の月の光が入る。紫姫の表情にはどこか大きな決意が感じられていた。
「優奈様、あの女は危険ですわ」
あるホテルの一角に優奈と椿はいた。
「優奈様の身になにかあったらわたくし生きていられませんわ……」
陰りのある表情で優奈に先ほどから訴え続ける椿。優奈は聞いているのか、聞いていないのか髪を指先でくるくるといじくり回していた。
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