僕と猫婆ちゃん

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 猫ばあちゃんというのは、何も猫の妖怪でも、ましてや猫の神様でも何でもない。  どこにでもいる普通のばあちゃんだ。  では何故“猫ばあちゃん”か。  それは、ただ年を取り丸くなった背中が猫のそれに似ていることから、僕が付けたあだ名だ。  今でこそ安直な発想だと思うが、当時は必死にひねり出した末の命名だった。  猫ばあちゃんの本名は長ったらしく難しく、どこの皇族かというくらい聞きなれない名前だった。 歴史の教科書に載っていても何ら違和感を覚えない名前を小学生の僕が覚えられる訳がない。  安直なあだ名ではあったが、彼女はいたく気に入ったようで、僕の呼びかけに嬉しそうに目を細めていた。  それから猫ばあちゃんは猫ばあちゃんで、僕は僕だった。
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