無口な君へ

「いってきます」

「いってきます」
いつもより少し遅めの出社。ちょっと走らないと間に合わないだろうか。
おっと、いけない。ちゃんと鍵をかけて、と。

私たちが住む家の丘をかけ降りて、近所の会社に行く。給料は安いけど、職場の人はみんな良い人ばかりだ。上司には真面目だと誉められるし、無駄な残業だってしない。
さあ、今日も仕事をきっちり片付けて、早く帰ろう。明日は休日だ。
そうだ、帰りにケーキ屋に寄ってミルフィーユを買っていってあげよう。君の大好きなフワフワのミルフィーユ。子供のように喜ぶ君が目に浮かぶ。