序章

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   その野心に、大妖は目を付けた。  折原 幻幽斎に施された結界の力は、弱まる事を知らずに百数十年が経過したものの、弱まる兆候が見えてきていた。  結界から垂れ流される妖気に、妖達が集まり忠誠を誓う者も多数いる。  そんな中でも、ここに来たカラス天狗には、大化けする可能性が感じられた。  手駒として、傍らに置いておきたい。  大妖は、カラス天狗を結界の社の近くに止まる事を許した。  大妖の妖気が、カラス天狗を育てていく。  呼吸から。  皮膚の浸透から。  垂れ流される妖気を吸収し、自らの弱々しい妖気を爆発的に成長させていく。  それが、何十年と続いた。  酷く弱々しかった妖気と体は、並の妖とは比べ物にならない程に成長し、やがては側近となるまでになった。  しかし、大妖は喜びはしなかった。 「我の、見込み違いであったとはな」  大妖は、その成長を自身の片腕になれる程まで期待したが、実際には召し抱えた側近の末席に据えるに留まる。  カラス天狗も、それには戸惑っていた。
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