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「ねえ、妹宮先輩?」
「何だ……イルカくん」
僕――品野伊琉伽(しなのいるか)の呼びかけに、先を歩いていた先輩は、足を止めて、上半身だけを捻るようにして振り向いた。
うん、可愛らしい顔立ちである。
先輩は麗らかな黒髪は肩口で切り揃えていて、余程こまめに切っているのか、伸びている姿は未だに見ることは叶っていない。
ポニーテールとかツインテールとかいつか見てみたいなぁ、と思う。
――ただ思うだけだけどね。
いつも虚空を見つめている先輩の切れ長の瞳が、ここでようやく僕の顔を視た。
その漆黒の瞳に見入りたい気分だが、それはまた次の機会となりそうだ。
彼女が僕を視たということは――
――妹宮霙が待ちくたびれてるということだから。
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