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待ちくたびれてるといっても、彼女の表情は特に、というか全く変化していない。
先輩は無表情なのである。
――それが、妹宮霙であるから。
「ああ、ゴメン、ごめん。
僕としたことが、先輩の時間を取らせてしまったね」
そのまま先輩に歩み寄り――その頭に手を置く。
先輩は別に特別、背が高い方ではないし、僕の身長も平均的な高校一年生のそれだ。
だからどうしても見下ろして、『頭を撫でる』という表現が適当というか妥当に落ち着いてしまう。
……先輩が十二歳である以上は、ね。
「いつまで触っているつもりだ? ……それと、何故微笑んでいる? ……まるで近所の小学生を見るような目で。――このロリコンが」
「答えを自分で言ってるじゃん。可愛いな、先輩は」
先輩が高校にいるのは別に変わったことではない。
ただ単に十一歳の時にこの高校を普通に受験して、普通に受かったというだけだ。
「……イルカ、先輩に上から目線というのはどうなんだ?」
一瞬、先輩は苦虫を噛み潰したような表情をした。
ところで、僕と先輩が行動を共にしているのは授業後のことである。
……つまりそれは僕と先輩が同じ部活に所属しているということに他ならず――
「……はぁ、イルカが自分の真似事で帰宅部を初めたときは、心底馬鹿だと思ったが、あの頃が懐かしいよ……」
――僕と先輩は帰宅部である。
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