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「行こう……イルカくん」
先輩は校舎の外へ踏み出した。
凛然とした、後ろを些細も気にかけない歩みである。
先輩の艶やかな黒髪が僅かに左右に揺れる。
その動きについ見入ってしまう。
――相手が先輩だから仕方ないね。
僕はいつも通り、先輩の隣で並んで歩く。
僕と先輩の足幅はかなり違うが、それでも僕は先輩に付いていくのがやっとである。
……そう、それはまるで、僕と先輩の関係のように。
駅前の大通りの、左右のさまざまな商店の看板を視界の端に捉えながら、
沈みかけの夕日と茜色に染まった空を見上げる。
夕日と雲が形成す幻想的な風景は、とても地球上に存在するものとは思えない。
人智の及ばぬ至高の芸術である。
そして、何故だろう、それはどこか、
先輩に――似ている。
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