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「えっと、今日高山高校と練習試合だったんだけど、俺その試合でダメダメで……。あっ、俺ピッチャーやってるんだけど、ワンアウトも取れずに降ろされちゃってさ。みんなにはバカにされるし、監督にもあきれられるしで……」
みどりの勢いに押された拓哉は、会って何分も経っていない女の子に今日の出来事を言ってしまった。話しながら、勝手に動く口に拓哉は驚いていた。
「へぇー、そうなんだ。じゃあ拓哉君と私は似たようなもんね。私も今日コーチにめっちゃくちゃ怒られてぐれてるんだ」
そう言うとみどりは、自分が持っていたジュースを一気に飲み干した。
「へぇ、みどりさんも何かやってるの?」
「うん、ちょっとね。あっ、みどりで良いよ。私才能ないから人一倍努力しないといけなくて、大変なんだよ」
そう言って今まで明るい表情だったみどりの顔が、真剣な顔つきになった。
「才能」
拓哉はその言葉が出てきた時、自分とみどりは似ているなと感じた。この子も自分の才能の無さを自覚している。そう思うと、拓哉はなぜか嬉しくなった。
「分かる。才能がないって、ツラい、よね。俺も自分の才能のなさに毎日絶望してる……」
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