天才なんて死ねばいい

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3月。 町外れにある高校のグラウンドで、春休みまっただ中の高校球児達が練習試合を行なっていた。7回で10対0と、片方が圧倒的に有利な展開である。リードしている悠善高校のマウンドには、この回から登板している4月から2年生になる佐藤拓哉が立っていた。 「ボール!フォアボール!」 拓哉の投げたボールは右に大きく外れ、フォアボールでランナーが出た。一人目もフォアボールだったためノーアウト1、2塁である。 キャッチャーの2年生平泉俊隆が、拓哉の元へ駆け寄る。 「おい拓哉、しっかりしろよ。2人に投げてストライク2つしか入ってないぞ。やっと出させてもらえたんだから、せめてこの回ぐらい抑えないといつまでも使ってもらえないぞ」 俊隆の言葉に拓哉はうなずいた。しかし俊隆の言葉は、プレッシャーに押し潰されそうな拓哉に追い打ちをかけただけだった。ボール2つを出していいかげんこわばっていた拓哉の身体は、ますますこわばった。 俊也が帰り、対戦校の8番バッターが打席に立つ。8番のバッターが拓哉を睨むと拓哉の緊張はますます高まった。拓哉はとにかく何とかしようと、緊張に震える手でボールを握って、1球目を投げた。
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