天才なんて死ねばいい

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キャッチャーの俊隆は低めを要求したが、1球目は大きく浮いてボール。ベンチのチームメイトが溜め息をもらす。その時、俊隆の言葉が拓哉の脳裏をよぎった。フォアボールを出してはいけない、ストライクに投げなければ。拓哉の頭はそれでいっぱいになり、緊張で嫌な汗が出る。 拓哉は震える腕を精一杯振って、2球目を投げた。今度は何とか外れていない。しかし、無理矢理ストライクに投げ込まれた球に球威は無く、高めに甘く入ってしまった。グラウンドに金属バットと球が奏でる快音が響く。球は外野の頭上を越えてフェンスに直撃。打ったバッターは勢いで3塁に進み、元々いたランナーは2人とも生還した。 「本当、アイツ才能ないよな。8番ごときになに三塁打とか打たれてんだよ」 すでに勝ちを意識して余裕の拓哉のチームメイト達は、ベンチで顔を見合わせて笑った。同じくベンチに座る悠善高校の監督は、頭を抱え溜め息をつく。 「はぁ…、せっかくお情けでリリーフに出してやったのに、まったくダメだな。ワンアウトも取れないじゃないか。交代だ交代」 監督は拓哉と同じ2年生の山下謙吾を、マウンドに向かわせた。 拓哉は自分に失望しているベンチの雰囲気を感じながら、惨めさと恥ずかしさにマウンド上でうなだれていた。 .
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