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「アハ…アハハハハ……」
口から無理矢理絞り出した声が通った。
続けて出てきたのは作られた淡い笑顔。
「いつから…わかったの…?」
「最初からだバカ。
許可とってから祭りに行こうとするし、蛇が飛んで来たときにあんまりテンパってなかったし、無理に元気だそうとしてたのは見え見えだった。
ましてやあんな抱き着くなんてするわけねぇし、そっからは無茶苦茶だったぞ」
「そっか…」
「最初は初めての儀式で緊張してるのかと思ったけど、んなたまじゃねぇからな」
さ~、と俺達の周りを風が吹く。
まるで俺達だけの空間にわけているように。
一時の静寂が訪れ、また流れる。
「……夢を見たの…」
「夢?」
「うん…予知夢ってやつ……」
巫女が一生に一度必ず見るってやつか…。
聞きたいような…聞きたくないような…。
「……何が見えたんだ…?」
「えっと…私が死んじゃうところ…」
「っ!」
なに簡単に言ってんだよ!
「夢で済ましたかったけど、何かわかっちゃって……ああ私死んじゃうんだなぁ…って…」
肩を揺らして泣いているのが優にわかった。
「死…って…こんなに…怖いんだね…」
笑っているが涙が頬を流れ落ちた。
そのときに俺に出来たのは…
「俺が守ってやるよ」
少々臭いがこれを言って、頭を撫でてやることだけだった。
けど儀式のとき、俺は自分の無力さを思い知らされることとなる。
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