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ガサッ…
重なりあう葉と葉の僅かな間から日が射す森の中で、不意にそばの草むらから聞こえた。
何か蛇くせぇと思っていたところで本体登場かよおい。
「た…隊長…」
二人一組の相方となった隊員が座り込んでいた石から尻に火が点いたようにバッと立ち上がり、気弱な声を出し呼んできた。
それでも剣を抜き、草むらに向けて構えているのは俺の教育の賜物。
腰が引けていて弱々しいのは別として。
「同時にかかるぞ」
「は…はいぃ!」
寄りかかっていたゴツゴツの幹から背を離し、草むらを睨み付ける俺の言葉に、裏返った声で返事をした。
一見ひ弱だが剣の腕は確かだ。
俺が英雄フォル=アーサーの一振りとされる草薙剣ならぬ蛇斬りの剣を抜くのを合図として、俺と隊員は同時に斬りかかった。
「うわっ! ちょっ待て!」
突然草むらが喋った。
んなバカな。
「なっ!」
驚きの声を出した直後、草むらの声の主を突き止めた俺は降り下ろす寸前で蛇斬りの剣を止め、そのまま止まらない隊員にぶつかって止めた。
「なっ何するんですか! 隊長!」
突然の俺の行動に当然驚く隊員を無視して、俺は草むらに潜むそいつに問いかけた。
「こんなところで何やってんだ……グレン」
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