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数十分前───
「では始めましょうか」
騎士団の隊員達が配置につくのを見送ったボンドが蛇の祭壇の階段を登りきってすぐそう言った。
今この場にいるのは雷帝ネルソン=セイルド、ボンド、騎士団第三部隊隊長、そして巫女。
儀式の準備はとっくに終わっており、後は封印の術式に必要な生け贄──いや代償がこの場に揃えば始められる。
「生け贄はどうしたんだい?」
騎士団第三部隊隊長である青年が、周りを一瞥した後、ボンドに聞いた。
「ああ、そうでしたね」
わざとらしく思い出したように言うと、後ろ─自分が登って来た階段に向き、
「彼女を連れてきなさい」
と言う。
すると黒服の男と共に少女が姿を現した。
少女は気絶しているのかぐったりと項垂れている。
「レース!?」
巫女の悲鳴とも言えるような甲高い叫び。
「ど…どうして…」
驚きのあまり状況が呑み込めない。
何故自分の娘がここにいるのか、何故あのボンドはこんなにも気味が悪いほど笑顔なのだろうか。
「何が目的だい?
そんな怪しげな男を引き連れてさ」
隊長の青年は自身の武器である黒い長剣に闇を纏わせ、ボンドに向ける。
「何って…私は生け贄を選んだだけですよ」
「んなもん聞いてんじゃねーよ。
お前の目的を聞いてんだ」
雷帝ネルソンが魔武器の甲に魔石の填まったグローブを両手に着け、拳を握る。
「んーとですねぇ…我らが救世主の復活ってところですかねぇ」
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