過去~十年前の儀式~

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「まあまあ落ち着いてください。 とりあえず巫女様がどうするか聞いてみましょう」 ボンドがリッジを手で制し、全員の視線が巫女に向かう。 「私は……」 「封印しなければ全員死にますよ。 簡単に言えば娘を犠牲にするか、全員を犠牲にするか、ということです」 「お前、封印させたいのかさせたくないのかどっちだい?」 リッジの質問に嘲笑うボンド。 まるで自分に敗北はあり得ぬと言わんばかりの顔だ。 「早いに越したことはありませんが、ここで巫女の血が途絶える結果でも良いと思っています。 人間程度の寿命ではありませんからね。 それに巫女様が娘を犠牲する姿を見るのも一興というところですから」 その瞬間、地面が揺れた。 リッジと巫女は大きな縦揺れに体制が崩れ思わず片膝付く。 だがどれだけ時間が経っても揺れは収まらない。 「ああ、そろそろ封印が解けますよ」 ボンドが自然に言った。 「関係ない! 僕はお前を殺す!」 リッジは揺れに耐え、矢を引き絞り、頭を狙って射る。 そしてすぐ弦に触れられた手から精製された闇属性の矢を射った。 ボンドは迎え撃とうとした黒服の男を手で制し、自身の尻尾で叩き落とす。 リッジはそれに少なからず驚いた。 だがボンドの行動はそれを上回る。 「こんなもので驚いていたら身が持たないですよ」 体を床に這わせ、肌の見えている部分が蛇のような鱗となる。 首が太くなり、髪が消え、歯が牙のように鋭くなると、その姿は蛇と人間が合わさったような形となった。 そして巫女は思う (夢の通りにするしかないかな…) と。
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