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「あらあら、喧嘩はいけないわよ」
いつの間にか接近していた白ローブの女性が優しく微笑みながら仲裁に入った。
すると簡単に雷帝と地帝は相手から視線をズラした。
過去に何があったかは定かではないが、この “光帝” には頭が上がらないらしい。
「んんははんばれってこほへしょ」
そこに両手におにぎりを持った少年がまでもが近づいて来た。
もはや誰にも戦前の緊張感を問いただす様子はない。
よく見ると脇に黒ローブを持っていた。
帝に次ぐ実力を持つ者の称号であるSランクの男でも “闇帝” の素顔を見るのは初めてだったが、こんなまだ学生であろう少年だとは思わなかった。
「ああもうややこしい!
食べるか話すかどっちかにしろよ! それとローブ着ろ!」
相変わらずな様子の闇帝に、雷帝が声を荒げる。
しかし闇帝は口を動かしたままだ。
「ほふはらはべることほっはらはにもほほらない」
そう言いながら手のひらサイズのおにぎりを一口で頬張った。そして空いた手を背中のポーチに送ると、また一つおにぎりを取り出した。
全帝と跪いた男は呆れて物も言えない。
と、そこへ、
「うやっっほっーい!
俺がぼっこぼこにしてやるからお前らは見てるだけで良いぜ!
俺の活躍見逃すなよ!」
痛々しいまでにハイテンションで、場に飛び込んで来た赤ローブの男は、最後に決めポーズまで決めた。
もはや折った膝を正すことも忘れた男ば、普段とはまるで違う “炎帝” の様子に唖然と口を開いた。
本来、彼は思慮深い、落ち着いた男なのである。
「また調合間違えた? なんで?」
僅かに遅れ、言葉からして犯人であろう青ローブの女性が小走りにやって来た。
「水帝……今度は何したんだい?」
炎帝を見つめ、首を傾げる水帝に地帝が呆れながら聞いた。
すると水帝は失礼だなと言わんばかりにムッとした表情で、
「なによその言い方っ。
炎帝が落ち込んでたから、気分が良くなる薬飲ませただけよ!」
その結果がこれなのだか、微塵にも悪いとは思ってないらしい。
「薬……どう考えてもあれでは薬物だろうよ」
地帝が雄叫びを止めない炎帝を指差しながら言う。
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