プロローグ

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「はっはっはっ! 俺だけで充分だぜ! 来い、ホンク!」 突き上げた右手、その手に握られた群青石が赤く光を放った。 そして、周囲に熱が満ちる。 「あーあ、早くしないから」 地帝が呆れを含んで告げた刹那、 赤い光は姿を変え、大柄な鎚へと変貌を遂げた。 発現直後から炎を纏っていた魔武器を握りしめ、炎帝はそれを何もない宙で振り回し始める。 ただそれだけなのに、熱風が巻き起こり、まずは水帝の体を打った。 「何すんのよ! 絶対ぼこす! 来て、クレイミア!」 ただそれだけなのに、直前の理不尽な指名のせいもあってか、水帝は怒りを炎帝に向ける。 胸の高さまで持ち上げた右手のブレスレットから青色の光が放たれ、水帝はその光の中で腕を降ろした。 青い光は払われ、露わになった右手には湾曲した短剣が握られている。その刀身も青い。 これから戦争だというのになに戦っているんだか……と言いたげにしているその他六人。 だが水帝は止まらない。 右手を左から右に斬り、空中に一を刻むと、その刃から水が噴き出た。瞬く間に一面を水びたしにした水帝は、ホンクを振り回している炎帝に水の上を滑って近づき、本の一秒で背後に回ると、その後頭部にクレイミアの柄で殴りかかった。 しかしホンクがすぐそばまで来ていることに気付き、水の壁を作り、その場を離れ、間合いを取った。 すると左手をローブのポケットに入れた地帝が歩み寄って来た。 「何をしているんだ。炎帝に接近戦で勝つなんて君じゃ無理だろ。 そもそもこれから戦争だっていうのに今魔力削ってどうすんだよ」 その言葉に水帝は何も言えなくなる。ムカつくが、この地帝という男は、間違ったことは言わない。 地帝は水帝の前に立った。 「来い、ノームタクト」 唱えながら左手をポケットから抜いた。隙間から茶色い光が漏れる中、指揮棒が現れる。左手にそれを持ち、まるで指揮者のようにそれを振ると、周囲の地面の砂が持ち上がり、炎帝へと殺到した。 そのまま攻撃と思いきや、縄のように炎帝の首、両手両足にまとわりつき、動きを封じる。
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