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「うるせぇ!
黙って寝てな!」
エルはそう叫びながら、《穴》の方にいた大柄な女に文字通り飛びかかっていた。そのままその女の頭をナイフで突き刺し、更にその女を台にして飛び上がる。
そして、エルは空中で叫んだ。
「ヴァン!お前は逃げろ!」
ヴァンは内心エルの考え無しさ加減に呆れながら、声もなく倒れた女の後ろに居た、2人の男に向かって走りだす。痩せた男と長髪の男にタックルで吹き飛ばし、着地して走り出したばかりのエルの隣についた。
「あんな事したら逃げるにも逃げられないじゃないですか!」
ヴァンは珍しく声を荒げる。当然ではあるが。
『てめぇら待ちやがれ!』
後ろから大勢の叫び声がするが、当然二人が止まる訳はない。
「悪いな、付き合わせて」
ヴァンはにやにや笑いながら言うエルを睨みつけた。
「ワザとなら後で一回殺しますよ」
「あー、悪かったって。
それよりどうする?
後ろの奴ら……あと29人いるぜ?」
エルは後ろに親指を向けて聞いた。
「そんなの言わずとも決まってるでしょう。
それより、普段は観察力無いのに良く人数見てましたね……」
ヴァンは呆れ半分、驚き半分で言う。2人は柵を乗り越えて中に入り、騒ぎ立てる政府の犬の方を向いた。
『反逆者共め、ブッ殺してやる!』
『政府に逆らってタダで済むと思なよ!』
追手から銃弾が飛んで来なかった事から、2人は同時にある事に気付いた。どうやら銃に弾は込められていない様だ、と言う事に。
一番の脅威であった遠距離からの狙撃が無いと分かった途端、軽口を叩き始めた。
「ヴァン、石を壊すつもりならこれぐらいどうにかしようぜ?」
「エルこそ、最期の殺し合いですよ?」
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