無死の夢視者

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 ようやく彼らも柵乗り越えて来たが、今度は後ろには回って来なかった。 『覚悟しろよ……!』  大きな男が声を荒げるが、その様子は少し怯えている様にも見える。それを見て、エルは嘲笑う様に言う。 「奴ら《穴》が怖いみたいだな」 「当然じゃないですか? 消えるのが怖いでしょうし。 ま、そんなの知った事じゃないですけど……ねっ!」  今度はヴァンが先手を仕掛けた。エルはなんだ、やる気じゃないか、と呟くと自身もヴァンに続く。 「っしゃ!俺も行くぜ!」  ヴァンは懐刀の峰で相手の刃を防ぎ、その白刃で次々と強引に薙ぎ倒していく。  それに対し、エルは素早く相手の刃の隙を抜け、素早く急所を貫いていく。  その戦い方も対照的な2人だが、ある共通点がある。 ──それは2人が18歳で不死になった後、3226年間で踏んできた場数だ。  たかが2人だから、と部下に任せて悠々と後ろから歩いてきた髭面は、その様子を見て慌てて3つしかない銃弾を取り出し、装填する。そして、動作が大きいヴァンを狙うが──彼が撃つことは叶わなかった。  彼が引き金に指を掛けたとき、その目前は刹那の黒い闇に染まり、銃と共に両腕が消えていた。 そして、次の瞬間には一閃の白い光が煌めき、髭面の首は宙を飛んでいた。 その頭は、声を上げる事も出来ずに大地に転がる。 「よし、これで終わりです。 ……全部で16人倒した私の勝ちですね」  勝利を確信し、ニヤリと笑うヴァンを見てエルは指を振る。 「残念だがこっちの最初の1人を忘れてるぜ。 俺も16人だからドローだ」  それを聞いたヴァンの顔は一瞬で悔しそうな表情に変わった。 「ああ、残念ですね。 最後ぐらい勝ちたかったんですが」
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