探究の丹求者

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──薄暗い地下室の中、2人の男と1人の女がいた。 「もう少しね……」  そう言ったのは黒髪が肩の辺りまで伸びている白衣の女だ。薄汚れた地下室に居るのが似合わない程美しく、まさに容姿端麗と言う言葉が相応しい。 「ああ。あと少しだ。 ……柿崎、榊原、そろそろ飯だ」  そう言った白衣の男は、首から「龍崎翔」と書かれた名札を下げている。他の2人が下げていないのを見ると、彼は几帳面らしい。 「なんだ龍崎、もう腹が減ったのか?」  榊原と呼ばれた茶髪の男がにやける。やはり彼も白衣を着ているが、シワだらけなところを見ると比較的適当な性格のようだ。 「いや、時間だ」  龍崎はそう答えると白衣を脱ぐ。彼は筋肉質で、白いTシャツの上からでも分かるほど体格が良い。 「早く行くぞ」  そう無表情のまま言うと、龍崎は扉を開けて素早く出ていってしまった。 「あれで賢者の石研究の第一人者なんだよなぁ。 もっと愛想良くすれば良いものを」  榊原が溜息をつきながら言うと白衣の女、柿崎が微笑んだ。彼女が微笑んだだけで、薄暗い地下室がまるで少し明るくなったかのように感じられる。 「まぁ翔ちゃんは仕方ないよ。 ずっとああなんだから。 それより司──」 「榊原司!柿崎渓子! 特に榊原!早く来い! お前が居ないと飯が出来ん!」 「へいへーい! ……早く来い、だってよ。 しかし、何もフルネームで呼ばなくてもいいのにな」  榊原は龍崎の怒号に応じ、愚痴りながらも白衣を脱ぐ。柿崎は既に脱いだ白衣を丁寧に畳んでいた。 「でもこれも完成まで後少しの辛抱ね」 「ああ……後少しさ。 さて、腹ペコ坊主の為に飯作りますかねっと」  榊原が白衣を丸めて投げると、2人は扉を開けて薄暗い研究室を後にした。
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