7人が本棚に入れています
本棚に追加
──薄暗い地下室の中、2人の男と1人の女がいた。
「もう少しね……」
そう言ったのは黒髪が肩の辺りまで伸びている白衣の女だ。薄汚れた地下室に居るのが似合わない程美しく、まさに容姿端麗と言う言葉が相応しい。
「ああ。あと少しだ。
……柿崎、榊原、そろそろ飯だ」
そう言った白衣の男は、首から「龍崎翔」と書かれた名札を下げている。他の2人が下げていないのを見ると、彼は几帳面らしい。
「なんだ龍崎、もう腹が減ったのか?」
榊原と呼ばれた茶髪の男がにやける。やはり彼も白衣を着ているが、シワだらけなところを見ると比較的適当な性格のようだ。
「いや、時間だ」
龍崎はそう答えると白衣を脱ぐ。彼は筋肉質で、白いTシャツの上からでも分かるほど体格が良い。
「早く行くぞ」
そう無表情のまま言うと、龍崎は扉を開けて素早く出ていってしまった。
「あれで賢者の石研究の第一人者なんだよなぁ。
もっと愛想良くすれば良いものを」
榊原が溜息をつきながら言うと白衣の女、柿崎が微笑んだ。彼女が微笑んだだけで、薄暗い地下室がまるで少し明るくなったかのように感じられる。
「まぁ翔ちゃんは仕方ないよ。
ずっとああなんだから。
それより司──」
「榊原司!柿崎渓子!
特に榊原!早く来い!
お前が居ないと飯が出来ん!」
「へいへーい!
……早く来い、だってよ。
しかし、何もフルネームで呼ばなくてもいいのにな」
榊原は龍崎の怒号に応じ、愚痴りながらも白衣を脱ぐ。柿崎は既に脱いだ白衣を丁寧に畳んでいた。
「でもこれも完成まで後少しの辛抱ね」
「ああ……後少しさ。
さて、腹ペコ坊主の為に飯作りますかねっと」
榊原が白衣を丸めて投げると、2人は扉を開けて薄暗い研究室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!